大切な故郷を未来につなぐ 恵田学区の挑戦

掲載号: りたらしい 138 号
発刊日 2026年3月

岡崎市域の約6割を占める中山間地域。豊かな水源の森や田畑が広がる一方で、人口減少や少子高齢化は深刻さを増し、地域の環境維持が大きな課題となっています。こうした状況に対応するため、市は2022年に「岡崎市中山間地域活性化計画~オクオカイノベーションプラン2030~」を策定。市内12学区を「オクオカ」と位置づけ、それぞれの強みを活かした持続可能な地域づくりを推進しています。
 その「オクオカ」の一つである恵田学区では、2022年に「恵田学区地域活性化対策委員会(通称:久楽志隊)」が発足。大切な故郷をより良い形で次世代へつなぐための活動が始まりました。
 りたではこれまで、下山学区をはじめとするオクオカの支援に携わってきましたが(本誌No.114, 127参照)、今年度からはここ恵田学区にて、地域一丸となった「計画づくり」と「活動づくり」の伴走支援を行っています。

恵田学区の要素

自然豊かで起伏に富んだ里山に囲まれた恵田学区。人口は900人強で、47学区中4番目に少ない規模ですが、駒立町のぶどう狩りや恵田小学校の「落ち葉スキー」など、市内外に広く知られる地域資源を有しています。
1990年代後半、人口減少に伴い恵田小の児童数は40人台まで減少しました。一時は小学校の存続が危ぶまれましたが、2000年に造成された「ライクタウン花園(140戸強の新興住宅地)」が学区に編入されたことで、児童数は一時期160名を超えるまでに回復します。しかし、それから20年余りが経過した現在、再び児童数は40人台へと戻ってしまいました。

 恵田学区はほぼ全域が「市街化調整区域」に指定されており、住宅の再建築や子世帯の新築に一定の制限があります。そのため、市街化区域と比較して人口が流出しやすい状況にあります。こうした人口減少や児童数の低下に歯止めをかけ、学校の存続と地域活性化のために立ち上がったのが「久楽志隊」でした。
久楽志隊は、増加傾向にある遊休農地を活用して、地域外の関係人口創出を図る稲作体験プログラム「丹坂米そだて隊」など、地域で出来ることを行いながら、地域の実情に応じた土地利用の実現を図る「集落維持計画」の策定を視野に入れて活動しています。

▲丹坂米そだて隊の様子(写真提供:久楽志隊)
 

「恵田学区みんなのアンケート」の実施

りたは、岡崎市中山間政策課より委託を受け、昨年7月から久楽志隊との協議を開始しました。まずは住民の皆さんの本音や、地域に眠る課題・資源を把握するため、中学生以上の全住民を対象としたアンケート調査を実施。久楽志隊と恵田学区総代会の尽力により、回答率は78.3%という非常に高い数字を記録し、地域への関心の高さが改めて浮き彫りとなる結果となりました。
この調査からは、遊休不動産の実態や、将来的なUターンの可能性を秘めた出身者の存在、そして老後の移動手段に対する不安などが可視化されました。一方で、「地域のために何か協力したい」と考えている方が少なくないことも判明しました。

    恵田学区の未来を考える井戸端会議

     1月25日、今後地域としてどのような活動を展開していくべきかを考えるワークショップ「恵田学区の未来を考える井戸端会議」を開催しました(主催:久楽志隊、共催:恵田学区総代会・岡崎市、企画・運営:りた、運営協力:ONE RIVER)。会場となった恵田小学校の図工室には、老若男女61名の多彩な顔ぶれが集まり、熱のこもった語らいの場となりました。
     冒頭では地域主体の活動事例として、りたが携わった「松應寺横丁」の関係人口を増やす秘訣や、岡崎学区の「ムリなく、ムダなく、ムラなく」を合言葉にした持続可能な地域運営の姿勢(よりなん「町内会サミット」より)を紹介しました。
     続くグループワークでは、アンケート結果等を踏まえた6つのテーマ(A.交流イベント、B.農用地保全、C.移住促進、D.小学校連携、E.困りごと解消、F.次世代)を設定。久楽志隊メンバーが各テーブルのホスト、りたとONE RIVERスタッフがファシリテーターを務め、参加者が関心のあるテーマを渡り歩く「ワールドカフェ形式」で意見を交わしました。
     各グループからの報告では、「移住・空き家相談窓口」や「空き田んぼバンク」の設置、さらには「落ち葉スキー体験会」や「盆踊りの復活」など、具体的かつ前向きな提案が次々と飛び出しました。地域の未来を自分たちの手で描こうとする、確かな熱量を感じる一日となりました。
     アンケートに寄せられた切実な声、井戸端会議で生まれた前向きなアイデア。そして何より、皆さんの「故郷を想う気持ち」は、地域を動かす大きな力となります。りたはこれからも、恵田学区の皆さんが描く未来に近づけるよう、共に歩んでいきたいと思います。